2011年05月29日

「無音」19

「矢島いつまで下手な作文を読んでるんだよ」「1ページだけで次へ行けよ」
「無音」又おばちゃんの作文か、
「小説だと本人は思ってて送って来る。自分の書いてる物が
とんでもない書き物だって言ってやりたいよ」

編集長はイライラしながら矢島に言った。
「廃棄処分のボックスに直ぐに入れて 次の小説に掛かれ!」
毎日多くの小説が送られてくる
矢島の仕事は その中からダイヤの一粒を発見するのが仕事なのだ。

大抵の物は1ページの数行で廃棄処分の中へ捨てられていく
しかし 矢島は この「無音」の送り主に対して
特別な感情を持ってた。
こんなに下手すぎる小説も滅多にないからだ。
いつか 編集者からあなたの今回の小説を本にしたいなんて
マジで思ってるのだろうかと、編集長の言ったように
おばちゃんに「あんたのは小説やない、もう書くのを止めなさい」と
どうにも成らない程、支離滅裂な文面だし・・・
しかし矢島はボックスの中に入れなかった。
矢島は原稿を鞄に入れて会社を出た。外は暗かった
この生活が矢島の毎日の繰り返しだった
途中 この時間に良く会うホームレスがいて、
矢島はそのホームレスに「無音」を渡そうと決めていた。
いた「お〜い」ホームレスの男が矢島に気づくと近寄って来た
「おっちゃん、身体は大丈夫かい」
「何とか大丈夫や!」暗がりの中では健康なのかどうか分かる訳もない
それでも 元気やと答えが返ってくる事が矢島には嬉しい。

「おっちゃん、小説読むか」いきなり言った
「小説 そんなもん長いこと読んでないがな」矢島は鞄から「無音」の
原稿を取り出しておっちゃんに渡した。
「読んでくれんか 感想も聞かしてくれ」
おっちゃんはビックリした表情で「難しい事はでけへん・・・」
「ええんや、読んでくれたらお礼に弁当何てどないや」
おっちゃんはお弁当に反応した。矢島はコンビニへ入って
弁当とお茶をおっちゃんに手渡した。
「分かった、これを読んだらええんやな」「頼む」
矢島は結局「無音」を別の形で捨てた。おっちゃんが読む事は無いだろう・・・
それでも廃棄処分ボックスよりは
捨て場所としておっちゃんで良かったと思いながら
駅へと急ぎ足で歩いていった。                     終わり


posted by 桂のたまご at 08:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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